ライフコラム

社会的事業所ってなんだろう? [その2]日本におけるソーシャルファーム(社会的企業)

title_column社会的に不利な立場にある方たちの就労・自立支援として、各国でさまざまな取り組みが行われています。国によって、根拠となる法律や政府の支援策にも違いがありますが、共通する考え方は、「社会から排除されたり、社会から孤立しがちな人たちを『働くこと』を通して、社会の一員として認め、迎え入れること」です。
日本の法律や制度に基づき、現在設置されている事業は「ソーシャルファーム」には当てはまりません。

ソーシャルファームの定義

①障害者ないし労働市場において不利な立場にある人々の雇用を創出するためのビジネスである。
②市場指向型の製品・サービスの生産を通じて、社会的使命を果たすビジネスである。(収入全体の50%以上を商取引により得なければならない)
③従業員の多く(30%以上)が、身体障害など労働市場で不利な条件を抱えている人々により構成される。
④全ての従業員に対し、各人の生産性の如何を問わず、仕事に応じて市場相場と同等の適切な賃金ないし給与が支払われる。
⑤不利な立場にある従業員と、不利な立場にはない従業員との機会均等が保証され、全ての従業員が同等の権利および義務を有する。

現在の日本には、障がい者の就労の場として「障がい者多数雇用事業所」「特例子会社」「福祉工場」「就労継続支援事業A型」などがありますが、欧州における「ソーシャルファーム」とは異なるものです。
上記の定義のうち①、②、③は満たせても、④や⑤にある考え方は、現状の日本の障害者雇用や福祉施設では、実現が難しいといえます。

今の日本の制度では、就労の場での障がい者は「利用者」であり、職員は「指導員・管理者」とされ、障がい者に支払われる「工賃」と、職員の「賃金」は別と考えられているからです。そうならないように工夫し、努力している企業や団体もたくさんありますが、それは良心的な経営者が独自の方法で個別に活動しているに過ぎません。
社会的事業所といった別枠の『新しい法制度』をつくることは、「社会的に不利な人たち」の雇用を生み出すだけではなく、介護士や社会福祉士、医療の現場などにおいて変わりつつある『新しい福祉』を担う、先進的な人材の育成にとっても必要なことです。


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